総合型選抜とは

総合型選抜とは

 大学の推薦入試の1つである総合型選抜とは、どの様な入試制度であるのか?その名前自体の認知度は広がってまいりましたが、その内容に関してはまだ正しく認知されていない部分もあります。ここでは、その内容のことを中心にご説明したいと思います。旧称のAO入試や他の推薦入試と比較し、総合型選抜とは何か?という多くの方が疑問に思っていることに対し、少しでもわかりやすく説明いたします。

目次


総合型選抜と他の推薦制度の違い

 総合型選抜とはどういう入試であるのか?それを元もよく理解するためには、他の推薦入試と比較をし、その違いを知ることが最も良い方法であるかもしれません。しかしながら、推薦入試にはさまざまな種類がありそれぞれに名前がついてはいるものの、入試の名前は大学が独自に定めているため、名称を元にその入試がどういったものであるかを定義付けすることには無理があります。総合型選抜という名がついていても、実際には他の名称の入試に近いケースも多々あるのです。ただ、入試の名称とその内容には一定の傾向があることも事実ですので、ここでは総合型選抜というものが、ao入試や学校推薦型選抜といった他の入試とどう異なるかを中心に説明し、総合型選抜とはどういった入試であるかを理解しやすいようにしていきます。

■総合型選抜とao入試の違い

 総合型選抜とは何であるか?こういう疑問をお持ちの方も多くいらっしゃるのは、ao入試の存在があるかもしれません。かつては、総合型選抜というよりao入試という言葉の方が、認知度が高い時期もありました。ao入試は1990年に慶応大学が取り入れ、その後、私立大学を中心に多くの大学が取り入れるようになった入試制度です。それに対し総合型選抜という言葉は、2020年から用いられるようになったものです。したがって、総合型選抜というよりao入試と言った方が馴染みがあると感じる方も一定数いらっしゃるでしょう。
 それまではAO入試という名称が一般的だったのが、大学入試改革の流れによって2021年4月に大学に入学する生徒を選抜する試験から、試験内容の変更とともに名称を変える大学が相次ぎました。現在、国公立大学や、国際基督教大学、成城大学、名古屋外国語大学、京都女子大学などの多くの大学で、この総合型選抜という名称が用いられた入試が行われています。一方で数は少なくなりましたが、依然としてao入試という名前の入試を残している大学もあります。関東では慶応義塾大学や明治学院大学、関西では立命館大学や関西大学などでが挙げられます。
 ではなぜそもそも、ao入試から総合型選抜へと名称が変わったのか?これは大学入試改革の一環で、総合型選抜の内容や、試験日程などに基準が設けられたことに起因します。大学入試改革の際、それまで行われていた一部の大学のao入試は、いわゆる一芸入試や合格時期が早すぎることなどが問題視されました。そうした問題を受け、特に一芸のみを評価するのではなく多面的に、総合的な視点から受験生を判断しなければならないということから、名称も総合型選抜と変わっていったのです。
 こうした歴史的背景を持つことを踏まえてao入試と総合型選抜の違いを申しますと、かつてのao入試は1つの側面だけで合否判定が行われていたケースもあるのですが、現在の総合型選抜ではいくつもの要素を踏まえて、受験生の能力を見極め合否を判断している入試だとなるのです。

■総合型選抜と自己推薦の違い

 総合型選抜と自己推薦はとても似ているといえます。そもそも、総合型選抜の中に含まれる1つの入試形態が、自己推薦入試だという見解もあります。ここでは、一般的な視点から総合型選抜と自己推薦の違いをここでは紹介しようと思います。
 まず、推薦入試においては受験生が通う高校の校長の推薦が必要になるというケースがあり、学校推薦型選抜などがその一例といえます。一方で、そうした校長の推薦を必要とせず、受験生が自らの意志だけで受験できる推薦入試もあり、そうしたものを学校推薦型選抜との対比で、自己推薦入試と称しているケースがあります。では総合型選抜はどうなるかというと、一般的には学校長の推薦が必要ないケースが多いものの、一部では必要になるものもあります。つまり、学校長の推薦が必要か否かという観点から鑑みれば、総合型推薦は必要な場合が一部あるのに対し、自己推薦の場合はほとんどが必要ないということになります。
 次に内容の面での違いに言及すると、 以下にも記しておりますが、総合型選抜は学力の3要素に加え、受験生が持つ資質を様々な側面から評価し、そして合否を決めるという側面がございます。自己推薦入試もこの総合型選抜の1つであると定義づけられますが、総合型選抜と異なる点を申しますと、多様な側面から受験生を判断するという点では総合型選抜と変わらぬものの、受験生が自己をアピールする1つの側面を、より高く評価する入試であるとお考えください。

■総合型選抜と学校推薦型選抜の違い

 総合型選抜と学校推薦型選抜の違いは、ここでもやはり、受験生が通う高校の校長の推薦が必要か否かが1つの違いとして挙げられます。総合型推薦は基本的には必要がない場合が多く、学校推薦型選抜は必要になるケースがほとんどだということになります。
 次に内容の面での違いですが、総合型選抜は先述通り、学力の3要素や受験生が持つ資質を様々な側面から評価するという側面がございます。それは試験当日の小論文や面接といったことにとどまらず、高校生活の中で積み上げた来た活動や資格などが大きく合否に影響するというものになります。これに対して学校推薦型選抜は、確かに総合型選抜同様、活動の実績や資格も合否の判断材料にするという側面もございますが、総合型選抜と比較して、筆記試験の配点割合が高い大学が多いという特徴が挙げられます。

■なぜ総合型選抜へと名称が変わったのか

 ではなぜAO入試から総合型選抜へと名称が変わったのでしょうか。これは平成33年の話になりますが、一般入試も含め大学入試改革の必要性が叫ばれ、入試の在り方を再考しようという流れが起きました。実際に、センター試験が共通テストと名前が変わったことは多くの人が知るところですが、それも入試改革の一例です。
 AO入試に関しては、事実上学力不問といわざるを得ない形式の入試が行われている大学もあり、「知識・技能」「思考力・判断力・ 表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を多面的・総合的に評価しなければならないのではないかとなり、「AO入試」「推薦入試」の課題の改善へと乗り出したのです。つまり、受験者個々のこれらの能力を総合的に見る必要があるとされ、試験内容に合わせて総合型選抜という名称を使用するようになったのです。

■試験実施時期

 大学入試改革では、試験の実施時期にも問題として取り上げられました。ここで話し合われた内容の1つに、合格時期が早すぎることが問題視されました。それまでは8月から出願が始まり10月には合格が決まっていた大学もありました。これはあまりにも早すぎるのでは仁香、高校での学習と大学での学習の橋渡しがうまくいかないなどの点から、出願は9月1日以降、合格発表は11月1日以降とし、そして入学前教育の充実という点も改善点とする方針が掲げられたのです。
 しかしながら現在でも、出願が9月1日以前に、合格発表は11月1日以前に行われている大学もわずかながら存在します。それは法的には制限がないためだと思われますが、ほとんどの大学では合格発表は11月以降に行われるように変わり、さらには合格者には独自の課題を提出する大学も以前より増えました。

総合型選抜で受かる人

 合否の基準がよく分からないといわれることも多いのが、総合型選抜です。たしかに一般入試と比較すればが、どうすれば得点が積み上げられるのか、そもそも何がどう評価されるのかといったことが明確とはいえません。それは大学や学部ごとに基準が異なるからというのが大きな理由といえるのですが、それでも評価されるものは確かに存在しており、まずはそのことを把握しておく必要があります。

■学力の3要素とは

 総合型選抜では、以下に記したのが学力の3要素が受験生に備わっているかを入試で測り、それを元に合否を決めることになります。しかしこれら3つは、言葉だけを見ても一体どういうものなのかがよくわかりません。そこで、これらがどういうものであるか、そして実際に総合型選抜という入試においてどのようにこれらの力を測るのかを、ここでは解説いたします。

①「知識・技能」
 まず知識や技能に関してですが、これらは評定、資格、筆記試験などで見ることが可能です。私立大学などでは一般入試においても2科目・3科目入試となっているなど、決して5教科全ての知識が必要というわけではありません。したがって総合型選抜においても、英語の評定だけを見る、英語の資格の有無を確認する、英語に筆記試験だけを行う、という大学も多くあります。

②「思考力・判断力・ 表現力」
 思考力・判断力・表現力に関しては、主に小論文、プレゼン、面接、グループディスカッション等でその能力を見ることが可能です。判断力等に関しても、例えば小論文ではグラフや表を与え、それが何を示し、この先どのようなことが予見できるかといったことから、その能力を量り知ることが可能となります。

③「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」
 主体性や協働に関しては、たとえば高校の頃の生徒会やボランティア活動の経験があれば加点の対象にしたり、グループディスカッションやグループワークを課したりして、それらの資質があるかを見極められます。つまり受験生は、高校生活で多種多様な活動に取り組むことが必須となります。最近では、高校が用意する各種活動に参加するだけではなく、校外の活動に参加することでより高い評価を得られるケースも増えています。

■より詳しく言うと

 先述の学力の三要素を嚙み砕きわかりやすくすれば、総合型選抜では以下のようなことが評価される入試であるということができます。
・知識や技能     ➡評定や資格
・思考や判断力や表現力➡小論文やプレゼンテーション
・主体性や協働性   ➡活動や探求の実績

 つまり総合型選抜を目指すのであれば、ある程度の評定があり英検や漢検といった資格を取得する。そして、そうした学習の面のみならずボランティア活動や探求活動を行い、小論文やプレゼンテーションといった試験対策をすることが必要となります。総合型選抜での受験を希望する高校生の中には、優れた活動実績のみで合格が可能だと考える方も一定数います。それはたしかに1つの大きな武器になるといえますが、学力の3要素すべてが評価されるという総合型選抜の特性上、それだけでは合格は難しくなるというのが実情です。


■アドミッションポリシーと志望理由書

 総合型選抜においては、大学や学部が掲げるアドミッションポリシーとの一致が重要だといわれています。では、このアドミッションポリシーとは何であり、なぜ重要視されるのか。
 アドミッションポリシーとは「入学者受け入れ方針」と訳され、各大学や学部において定められる、「どういう受験者を入学者として認めるか」というものになります。一般入試においては試験の得点が高ければ合格となりますが、多様な側面が合否の判断材料とされる総合型選抜においては、アドミッションポリシーからどういう点が重視されるのかをあらかじめ知っておくことが、合格につながるために重要視しなければならないものとなるのです。
 アドミッションポリシーには。どういう受験生を新入生として受け入れるかが記されているわけですから、自分がそのようなアドミッションポリシーに即した人物であることを大学側に分かってもらう必要があります。そのためのツールとなるのが志望理由書をはじめとした、出願の際に提出する書類になるのです。志望理由書には主に、大学入学後に学びたいことや研究したいことなどを記入します。大学が学問を修めるための場所ですから、それが最も重要であることは疑う余地はありません。
 しかしながら、志望理由書のみですべてが決まるという声が多く聞こえる現在の風潮には、いささか疑問を感じます。なぜなら何度も言うように、総合型選抜は学力の3要素を測り合格者を決めます。以前は一芸入試といわれていた反省からそうなったという文脈を鑑みれば、志望理由書の良しあしですべてが決まるような入試が今でも行われているとの考えは、この文脈に逆らう流れだといえるのです。
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